小児科医の多数参加する、あるメーリングリストで話題になった、インフルエンザによると思われる異常行動例をまとめたものです。井戸端会議のレベルの情報収集ですから、数年前のものも含む雑多な症例の集合ですが、医療者の方には、一定の参考にはなるかもしれないと考えて、公開します。15例を年齢順に並べてあります。
何も内服をしていない例や、タミフル以外の内服後に出現したものもあります。内服をしたケースでは、初回内服後の数時間以内が多いようです。また1例だけですが、内服後に死亡した乳児のケースもありました。典型的なインフルエンザ脳症の経過で、タミフル内服直後ですからタミフル「だけ」でなったとは考えにくいですが、症状を悪化させた「可能性が一切ない」とも、とても結論できません。
稀なことなので、過剰な心配は不要と考えますが、薬を内服していなくても、発熱後の初日と、内服した場合には、その後の数時間以内は、子どもを注意深く観察しても、悪い事はないでしょう。
なお、問い合わせは、熊本大学発生医学研究センターの粂(くめ)和彦まで
ただし、ここに記した以上の詳細は、わからないケースが多いです。
この件に関する経緯などは、私のブログにあります。
また、このページの転載は禁止しますが、リンク・紹介して頂くのは構いません。
しかし、何らかのコメントをする場合、最低限、製薬会社から公式発表されている内容と、
抗インフルエンザ薬使用についての現状での専門医の見解も、参考にして下さい。
(確定診断:+はインフルエンザと確定しているが、A,Bは不明、?はインフルエンザかどうか不明)

(2005.12.18.追記)
本ページが、2005年12月17日の毎日新聞朝刊2面に紹介されました。
=>「誘引」という言葉について、説明しました。
公開後、さらに、9例ほどの情報を頂いたので、追加掲載します。
# 年齢 性別 症状・経過 服薬 確定診断
1 6ヶ月 発病1日目、インフルエンザ迅速キットで陽性。近医にて常用量のタミフルの処方を受けた。一回目の服薬後、午睡中に心肺停止。救急センターに救急搬送されるも蘇生せず、死亡確認。 タミフル +
2 2歳 B型インフルエンザと診断、タミフル約5回内服後、解熱していた。昼寝から覚醒後「いやだ」「にげてー」など足を壁にドンドンぶつけて大声を出して泣きわめき続けることが1時間弱続くという現象を認めた。母親はわが子が「気が狂ったようになった」と表現したので尋常な様子ではなかったようだ。その後も夜になって寝るのが怖いといい、5日間くらい夜、布団に入れず、「暗くしないで」「ねんねしない」など駄々をこねた。 タミフル B
3 3歳 甲高い声でわめき出す、異常な興奮、多動その後痙攣の重責。服薬なし、救急搬送後、シンメトレル使用 なし
4 4歳 発熱なし 軽度感冒様症状のみ、救急外来受診時に、「お花畑が見える」と主張、CBC CRP定性正常、翌日は意識清明 なし ?
5 5歳 インフルエンザBに罹患。高熱時、地面に穴があって落ちるなどと怖がりながらながら家の中をうろついた。精神症状は1晩だけ。抗インフルエンザ薬は使用せず。ワクチンは2回接種した。 なし B
6 6歳 嘔吐と38.8度の発熱、未投薬。その夜にせん妄、何かが襲ってくる、とおびえ逃げ回る。押さえ切れないほどの力で暴れる。翌朝には意識清明で夕方に解熱。軟便傾向だったがそれ以外の症状消失 なし +
7 6歳 タミフル、カロナール内服1回後の夜、「こわい、こわい」といいだした。親の話では、10分くらいで落ち着いた。体温は39℃はあった。その後タミフルは3日間、内服を続けたが、同様の症状はなし。翌日には下熱。確定診断:B型 タミフル
カロナール
B
8 7歳 タミフル内服1回目で、自分が知らない内に、靴を履いて外にでていた。気づいて、自宅にもどる。(距離にして数十メートルとのこと)タミフル内服を続けたが同症状はなし。内服2日で、解熱。確定診断:A型 タミフル A
9 7歳 喘息既往あり、アンヒバ・タミフル処方、発熱中に暴れて泣き叫ぶ、外に飛び出しそうになる。翌日意識清明。1週間後の就眠中に、不安感で中途覚醒。以後は、異常なし。 タミフル
アンヒバ
+
10 9歳 A型と診断。タミフル2回内服で、翌日に解熱するが、不安・恐怖を訴え入院。睡眠リズムに障害、健忘、不安、思考低下を伴う意識変容が1週間持続。画像状異常なし。脳波は、高振幅徐波。軽快して退院するが、1ヵ月後に、同様の症状が1週間再燃した。(症例報告済み) タミフル A
11 10歳 迅速検査でインフルエンザA+でシンメトレルとカロナール処方。量は能書のとおり。既往歴に神経疾患(ー)痙攣(ー)アレルギー(−)1回分内服1時間後、訳のわからないことを口走り寝た状態からもぞもぞと起き上がろうとした。高熱があっても1度もそういうことはなかった。押さえつけて数時間で収まった。そのときのことを子供は殆ど覚えてはいなかった。翌朝は解熱していつもどおりだった。 シンメトレル
カロナール
A
12 11歳 朝から発熱出現し自宅安静中、意味不明な言動を発するようになり、暴れだしたとの事で救急搬送。意識レベルは痛み刺激には反応あるも呼びかけには反応鈍い。CT上頭蓋内異常なく、髄液検査でも異常なし。脳波も正常。一晩経過観察したところ翌日には意識状態回復。まもなく解熱しその後特に問題なし。後日血清検査でインフルエンザIgM上昇あり。受診時まで内服なし。痙攣の既往なし。 なし +
13 13歳 日中学校へ行き、夕方帰宅したところ発熱出現、市販のイブプロフェン錠を内服し自宅のソファで休んでいたところ、内服後1時間後に急に不穏となり意味不明の言動出現。救急搬送されその日は脳外科へ入院。翌日小児科へ紹介。その時点では意識状態清明。インフルエンザ迅速診断陽性、髄液検査異常なし、脳波正常。その後は特に問題なく数日で退院。 イブプロフェン +
14 15歳 7〜8年前の症例。中学3年生。インフルエンザ流行時期で,当日の朝から熱があった。夜間に母親を包丁を持って襲おうとした。精神科に緊急入院。数日後も、目はうつろで、「マイケル・ジョーダンに会いに行くから」と病室を出ようとした。数週間後には,完全に正常化して高校にも合格した。 なし +
15 35歳 1月中旬インフルエンザと思われる発熱あり、その後も咳が続いていた。1下旬、夜に興奮状態となり、幻覚、妄想、不眠があり、「小さい子供が部屋の中で舌を出している、お侍さんの仮面をかぶった人がいる」と呂律の回らない口調で言う。デパス等服用し2−3日で落ち着き、後遺症も無し。ただし呂律が回らない状態は軽度ながら10日くらい続いていた。(精神症状は無し)確定診断(抗体価提出)せず。事前に心因は特に明確なものはなく、その後も精神的な問題は無し。 なし
以下は、追加分 (2005年12月19日追加)
16 3歳 発熱をした夜、午前3時頃、急に「わー」と叫んだ。少しふるえて眼球は上を見ていた。しばらくして、落ち着いたので、どうしたの?と聞くと「わからない」と答えた。この時、39.5℃。午前5時頃再び同じ状態を繰り返した。翌日受診、迅速検査陽性。 なし +
17 7歳 喘息で、テオドール,ゼスラン,フルナーゼを内服中。38.5℃の発熱,寝付く前に体がぴくぴく、左手をグーパーと握ったり開いたりしたので受診。タミフル,テオドール,ホクナリンテープ,ゼスラン,ムコダイン処方。服薬後すぐ嘔吐、夜10時頃、再度、異常行動あり。翌日未明、気が動転するくらい大きな声で叫んだので救急車を呼んだ。その後も、毛布がたくさんみえるなどの訴えが有った。 タミフル(ただし嘔吐あり)、テオドールなど +
18 7歳 朝から発熱。夜になって、「変な行動」あり、耳鳴りがすると言う。笑ったり、ずっと夢見ているようだったりした。 なし +
19 7歳 発熱3日目の夜中に、突然目をパッチリ開けてケラケラと4-5回笑い目の焦点が合わない(=目が据わった)感じになった。それ以上のエピソードはなし。笑ったことについて親が尋ねると、笑ったことは覚えているがなぜ笑ったのか分からないと答えた。 シンメトレル A
20 9歳 39℃発熱。夜になって目をあけておかしな事を言っていた。 なし +
21 10歳 39.1℃の発熱。夜、特に情緒不安定状態になった。 なし +
22 11歳 39℃発熱。夜、目をあけて、寝ながら変なこと(何かいるなど)を口走った。上肢を挙上して何かを振り払う感じ。明らかに異常で母親は脳がやられたと思った。 なし +
23 12歳 A型と診断、シンメトレルを処方、1錠内服後、夜、目をギラギラさせて両腕を「小さく前へ習え」の姿位にしたまま変なことを口走った。ほんの短時間の出来事。布団から抱き起こすと普通に会話は出来たがその後も数分〜十数分の間は両手指が異常な姿位(親も上手く説明できず)のままだった。アマンタジン内服を中止し,第3病日は問題なく第4病日には解熱。 シンメトレル A
24 14歳 タミフルを服用、その後幻覚を見て、家を飛び出し、小川に飛び込もうとした。高熱があった。翌日には、まったく改善 タミフル +